賃貸経営をしているとき、直面しやすい問題の一つが「クレーマー」の存在。こうした入居者と遭遇してしまったときに「クレーマーを退去させる方法を知りたい」という大家さんは多いでしょう。
この記事では、そのような大家さんのために、以下の内容を解説します。
また、個別の疑問点として特に多い、下の2つの内容も説明します。
これらの内容を理解することで、クレーマーに対してもさらに冷静に対応できるようになるでしょう。クレーマーに悩んでいる大家さんも、これから遭遇する前に対策を考えておきたいという大家さんも、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
(なお、賃貸経営で起きやすいトラブルについては下の「自主管理」の記事でも詳しく解説しています。さまざまなトラブルの事例と対処法を知りたい方は、下の記事もご覧いただけたらと思います)

また、クレーマーへの対処は「やり方を理解していても、かなり消耗する」ものです。そのため、最初から経験豊富な管理会社に任せるというのも一つの選択肢です。
「まとめ」で詳しく紹介しますが、そのような管理会社の候補の1社として、下記のリンク先の「武蔵コーポレーション」をおすすめします。同社の管理サービスの詳細は、リンク先で詳しくご覧いただけたらと思います。
目次
クレーマーを退去させるには?ケース別の3つのポイントを解説
クレーマーを退去させる方法のポイントは、まずクレーマーが家賃滞納などの「契約違反」をしているかどうかで、下の2通りに大別できます。
違反している | 法的措置で追い出せる |
---|---|
違反していない | 交渉して出ていってもらう |
「違反していない場合」については、本人が出て行きたがっているか、いないかで、下の2通りに大別されます。
出たがっている | 立ち退き費用を渡せば出ていってくれる |
---|---|
出たがっていない | 更新を待つか、退去交渉をする |
「出たがっている」のは、主に近隣トラブルです。「出たがっていない」ケースはさまざまで、個別の状況によります。
この段落では、これらのポイントについて詳しく解説していきます。
家賃滞納者…訴訟・強制執行の手順を踏めば追い出せる
家賃を滞納しているクレーマーは、ある意味「楽」です。たとえば、下の条件なら完全に合法的に退去命令を下せます。
- 3カ月以上などの長期間、滞納が続いている
- 電話・書面などの督促を続けてきた
- その後に内容証明を送付し、訴訟に入った
あとは訴訟(裁判)でどっちが勝つかですが、当然こちらが勝ちます。そして、裁判に勝ちさえすれば、そのまま強制執行(差し押さえ)をできるのです。
- 家に居座るなら「不法侵入」である
- 警察を呼んで、出ていってもらえる
- 家財道具は好きなように処分していい
という流れになります。デメリットは数カ月分の家賃を回収できないことが多いケースです。相手にお金があれば回収できますが、このようなケースでは大抵「ない」といえます。
そのため、多くのオーナーさんがこの方法をとるときは「損切り」として割り切っているのが実情です。そのようなロスは発生するものの、退去命令自体は「一番やりやすい」ケースといえます。
近隣トラブル…立ち退き費用を渡して出ていってもらう
近隣住民とのトラブルは、家賃滞納と違い「どちらが悪いか」が明確でないもの。そのため、裁判を通すやり方は時間がかかります。
そのため、手っ取り早いのは「立ち退き費用を渡して、クレーマーに出ていってもらう」という方法です。一般的に家賃数ヶ月分を渡せば出ていってくれることが多いとされます。
近隣住民とのトラブルがある場合、クレーマー当人も決して居心地が良くはないためです。「出ていきたいがお金はない」とか「何で俺が出ていかなきゃいけないんだ」という気持ちも、ある程度のお金があれば治まる、ということが多いといえます。
どちらが悪いか明白な場合
この場合は訴訟を起こしても比較的簡単に決着がつく場合が多いもの。ただ、大抵のクレーマーは裁判に負けた後で支払うお金を持っていないので、勝訴してもムダに終わるケースが多いものです。
そのため、多くの専門家が「諦めて立ち退き費用を渡して出ていってもらうのが現実的」と指摘しています。理不尽ではありますが「安い物件を運営していると、そのようなこともある」と受け入れなければいけません。
(基本的に「安い場所」は、あらゆるトラブルが起きやすいものです)
訴訟できない相手…更新時期を待つ、退去交渉をする
ここまで説明してきた2つのケースは、
- 法律的に追い出せる
- 法律的には追い出せないが、本人もお金さえあれば退去したい
ということで、比較的「追い出しやすい」ものでした。厄介なのは「ここまで悪くない」ものです。
- 滞納などの法的問題はない
- 近隣住民とのトラブルもない
- ひたすら大家のみにクレームを付けてくる
この場合、営業妨害といえるレベルのクレームなら、その路線で訴えることもできます。しかし「そこまでひどくない」場合は、訴えることも難しいのです。
「かまってほしい」人が行いやすいクレーム
このようなクレームを行うのは、主に「かまってほしい」人です。具体的には下のような条件に多く該当する人ほど、「かまってほしいクレーマー」になりやすいといえます。
- 一人暮らし
- 無職
- 年金生活者
- 生活保護受給者
どの項目も「クレーマーになりやすい」というイメージが湧きやすいでしょう。もちろん、こうした属性の方が「悪い」というわけではありません。善良な方も多く見えます。あくまで「これらの属性に当てはまるごく一部」の方が、クレーマーになりやすいということです。
訴訟できないなら、更新を待つか退去交渉をする
訴訟をできなくても、2年に1回の更新で「更新をしない」という選択(更新拒否)をすれば、出ていってもらえます。また、それまで待てないのであれば「退去交渉」が必要です。
この交渉がどうなるかは、そのケース次第です。いくらかの立ち退き費用を提示し、クレーマー側が納得してくれれば立ち退きが成立します。
賃貸での迷惑行為に強制退去命令を出す3つのステップ
ただのクレーマーを通り越して「迷惑行為」を働いている入居者がいる―。そのような場合、下の3つの手順を踏むことで、強制退去命令を出すことができます。
以下、それぞれの手順について解説していきます。
証拠を収集する
まず、その迷惑行為の「証拠」を収集する必要があります。たとえば「大声を出す」という行為であれば、以下のような「データ」をとります。
- 音量
- 音の内容
- 時間帯
- 頻度
難しいのは「音量」ですが、これは部屋で録音をし「この位置・このスマートフォン・このマイク音量で、このボリュームで録音された」ということを示します。その証言が「絶対に事実である」という証明は難しいものですが、こうした「証拠を残す」ことだけでも、信ぴょう性は大幅に上がります。
(そもそも、隣人がまったく騒音を出していないのに、わざわざこのような「証拠の捏造」をする人は、めったにいないためです)
是正を促し、その記録も残す
証拠が集まったら、それをもとに「是正」を促します。
- 最初は口頭でもいいが「日時・内容」は記録しておく
- 口頭で改善されないなら、すぐに「書面」で伝える
本来、このようなものは「書面」で伝えるのが基本です。記録が残るためです。ただ、信頼関係を考えると「いきなり書面」は冷たいというこっともあるでしょう。その場合、最初は口頭からでかまいません)(ただし、記録は残しておきます)。
書面で改善されなければ、内容証明郵便を送る
実は、書面も「そんなものは受け取っていない」とシラを切ることができます。このようなシラを切れないのが「内容証明郵便」です。
「このような内容の郵便を送った」「それを相手が受け取った」ということが、証明される郵便です。裁判などの通達(裁判所への呼び出し)にも使われます。
ここまで来ると「是正を促した」という証拠は完全に残ります。ここで無事に是正されればいいのですが、是正しない場合もあるでしょう。その場合は「次のステップ」に進みます。
契約解除をし、立ち退いてもらう
この段階では、すでに賃貸借契約での「解約の条件」に該当しているはずです。たとえば「信頼関係がこわれた」などの条件に該当します。そのため、契約解除はすぐにでも可能です。
補足…法的根拠
ここまで書いた内容の法律的な根拠としては、例えば以下の公益財団法人の文章などがあります。
再三の改善要求にもかかわらず、賃借人の迷惑行為が改善されない場合、賃貸人は、賃貸借契約の用法遵守義務違反を理由に契約を解除し、建物の明渡しを求めることができる。
建物賃貸借契約書に、賃借人の迷惑行為による契約解除の条項がない場合でも、契約解除が可能と解されている。
賃借人の迷惑行為に対する、賃貸人の義務と契約解除の可否(公益財団法人・不動産流通推進センター)
基本的に「普通に考えておかしい」という人は、大抵強制退去の対象になると考えてください。
生活保護でも追い出すことは可能?
クレーマーが生活保護を受給している方だった場合に「受給者でも追い出せるのか?」という点が気になることも多いでしょう。ここでは、そのような「生活保護受給状態での退去要請」について解説していきます。
ルールは通常と同じ(問題があれば契約解除をできる)
生活保護を受けていてもいなくても、追い出し(退去勧告)に関するルールは変わりません。
- 周りの入居者に迷惑をかけている
- あるいは大家に迷惑をかけている
- 契約時の信頼関係が崩れていると判断できる
という場合、生活保護の有無に関係なく「普通のルール」で追い出すことができます。
受給者の引越費用が「一時扶助金」から出ることも
生活保護の受給者が引っ越しをする場合、必要と認められれば、その費用が役所から支給されます。これは下の記述でわかります。
転居の際の敷金等
・居住する住居が著しく狭隘又は劣悪であって明らかに居住にたえないと認められる場合
・家主が相当の理由をもって立退きを要求し、やむを得ず転居する場合
【PDF】保護の種類(一時扶助等)について | 印西市
もともと生活保護に「一時扶助金」というものがあり、あらゆるイベントで「必要であれば」支給されるようになっています。転居もそれに含まれるということです(つまり転居だけが特別というわけではありません)。
引越し費用が支給される人の条件
どのような生活保護受給者であれば、引越しの費用が支給されるのか―。これは自治体によってルールが異なり、さらに「個別の審査が必要」になります。
つまり「明確な基準」はありませんが、おおよその目安例はあります。たとえば「引越しの前=現段階でどこに住んでいるか」について、下のパターンだと認められやすくなります。
- 社会福祉施設から退所する
- 病院から退院する
- 退職して社宅を出る
- 親戚・知人宅から出る
- 無料低額宿泊所から出る
いずれも「こういう場所から引っ越すとき、生活保護受給者ならお金がなくて途方に暮れるだろう」と、容易に想像できるケースです。最後の「無料低額宿泊所」というのは、いわゆる「ドヤ街」です。正式な説明は下のようになります。
無料低額宿泊所(むりょうていがくしゅくはくじょ)は、政府への届出によって設置できる福祉的居住施設。
無料低額宿泊所(Wikipedia)
この他にも、まだ多くの条件があります。
家の状態が明らかに悪い
家の状態については、下のものが支給対象となります。
- 世帯人数から見て、家が明らかに狭い
- 病気療養に、明らかに悪い環境
- 身体障害を考えると、住める環境ではない
- 火災などの災害で、住める状態ではない
- 老朽化・破損で、住める状態ではない
わかりやすくいうと「さすがに引っ越しさせてやれよ」と誰もが思う状態です。「健康で文化的な最低限度の生活」に当てはまらない住居といえます。
前向きな理由
「前向きな理由」としては、下のようなものがあります。
- 転居が明らかに自立の促進になる
- 仕事をしており、その勤務先から明らかに遠い
- 扶養義務者の介護を受けるため、その近くに転居する
自立できることも労働できることも、健康状態などが良くなった証拠です。また、家族などが介護してくれるようになったことも、人間関係の面からいえば「良いこと」といえるでしょう。
その他の理由
「大家からの立ち退き請求」は、ここに含まれます。
- 賃借人(大家など)に退去を請求された
- 国・自治体の都市計画で立ち退きが必要になった
- 離婚で新たな住居が必要になった
- 家賃が生活保護規程をオーバーしており、住み替えを指導された
このルールがあるため、状況によっては、受給者の引越し費用を自治体から出してもらえる可能性があるわけです。自治体ごとのルールによっても異なるため、一概にはいえませんが「このような可能性もある」と意識していただくといいでしょう。
騒音クレームへの対処法
クレーマーによる苦情の中で、一番多い内容は「騒音」に関するもの。ここでは、騒音クレームに対応する基本の手順と、状況別の対応パターンを説明していきます。
どのパターンでも共通する4つの基本手順
まず、どんなパターンでも共通する「基本の手順」は下のとおりです。
以下、それぞれの手順について詳しく解説していきます。
騒音への注意を促す紙を掲示板に貼り出す
まず、マンションのエントランスなどの掲示板に「騒音への注意」をうながす貼り紙をします。たとえば下のような文面です。
深夜に大きな音を出すなど、他のの入居者の迷惑になる行為は控えてください。
文面は何でもかまいません。文例がWEB上に多くアップロードされているので、それを参考にワードなどで作成するのがいいでしょう。
貼り紙と同じ文書を各部屋のポストに投函する
掲示板では「全員が読む」とは限りません。そのため、同じ内容の文書を戸数分印刷し、各戸のポストに投函します。
これで、長期出張などをしていない限りは、確実に「全員が読む」ことになります。そもそも、騒音のクレームが来た時点で、その発生源とされる方は出張していないはずです。つまり、これで確実に読むといえます。
さらにクレームが来たら、一緒に音を確認する
「一般的に見て明らかな騒音」なら、上のやり方で「発生源」となる人が、大体止めてくれるものです。普通の人なら、その後のクレームは寄こしません。
しかし、クレーマー入居者の場合は、ここからさらにクレームをつけてきます。これについては「本当にうるさいのかもしれない」ので、一緒に確認する必要があります。
- 「騒音がしたら一緒に確認する」と伝える
- そのため「音が出ている時に呼んでほしい」と伝える
こうすると「自分がクレームを付けているのはそれほどの騒音ではない」という自覚があるクレーマーの場合、呼んできません(不利になることがわかっているためです)。
しかし「本当にうるさい」と感じている人の場合は、呼んできます。「呼んで一緒に聞いてもらえばわかってくれる」と考えているわけです(これは聴覚が過敏という可能性もあるため、必ずしも悪気がわるわけではありません)。
一緒に確認して問題がなければ、その旨を告げる
少々手間はかかりますが、連絡が来たらクレーマーの部屋に行き、一緒に「騒音」を聞きます。そして、それが生活音の範囲であれば、下のような内容を明確に告げます。
- これは騒音ではなく「生活音」である
- 多少の生活音がすることは共同住宅なら当然である
- それを受忍することも「秩序を守る」ことのうちである
- 「秩序を守る」ことは、最初の契約でも約束している
このような理由で「受け入れなければならない」ことを伝えます。
クレーマーの状況別・4つの対応パターン
上の段落で説明した手順の先は、クレーマーの状況によって対応が4パターンに分かれます。一覧にすると下のとおりです。
以下、それぞれのパターンについて説明していきます。
「普段はもっと音が大きい」と言われた場合
現場でよくあるのが「今は小さいだけで、普段の音はもっと大きい」とクレーマーから言われるケースです。この場合、下のように対応します。
- 具体的にどんな音なのかを尋ねる
- そのような音を出しているかを、上階の人に尋ねる
- その上階の人物と、どちらが信用できるかを判断する
当然ながら「上階の入居者が悪い」という可能性もあります。上階が自分の物件でなければ、この作業については「管理人さん・管理会社経由」で行うことが必要です。
階下の人がクレーマーだと判断された場合
完璧な審判はしにくいものですが、「一般的に考えて、階下の人がおかしいだろう」と判断した場合、退去していただくことになります。これについては、いきなり「退去を迫る」のではなく、やんわりとその方向に持っていきましょう。
- 一般的に考えて、騒音とは思えない
- 他のマンションでもこれ以上の対応はできない
- うちのマンションでも、できない
- それがご不満なら、引っ越していただくしかない
ここで、その音を「本当に騒音だと思っている」人は引っ越すはずです。聴覚や神経が過敏で「悪気がない」方の場合は、ここで引っ越してくれるでしょう。
「引っ越さずにクレームをつけ続ける」入居者の場合
ここまで来ると「外部の騒音調査」を入れる必要があります。たとえば、ある騒音調査の会社では、スタンダードな騒音調査パックの料金が約5万円となっています。含まれるのは下のようなサービスです。
- 騒音計の貸出(3日)
- 騒音分析・解析
- 報告書作成・送付
3日間継続して計測するので「今静かなだけ」という主張は退けることができます。「この3日間静かだっただけ」というなら、もう3日間延長してみればいいでしょう。
この費用はどうなるのか
もし「明らかな騒音」があったら、上階の人に負担してもらうことも考えるべきです(少々交渉が厄介ではありますが)。逆に騒音がなかったらクレーマーの方が負担すべきです。
このことは最初にクレーマーの方にも伝えておきましょう。「騒音がなかったら、この調査費用も負担してもらうが、それでもいいか」という内容です。
おそらく、自分がクレーマーであるという自覚がある人なら、ここで引っ込むでしょう。「調査されたら不利になる」ためです。
調査して「騒音がない」となっても引越しもしない場合
ここまで来ると、社会通念上「信頼関係がこわれた」と言っていい状態でしょう。客観的な数値で「騒音がない」と証明された以上、営業妨害といってもいい状態です。
そのため「このままだと契約解除をして強制的に引っ越してもらうことになる」という旨を告げて、早めに転居していただきましょう。それでも転居しない場合は、強制的に退去させることになります。退去しない場合は、裁判を起こす方法もあります。
このように、最終的に「正しい方は勝つ」ようになっています。ただ、そこに至るまでの道程があまりに長く、かかる労力も膨大です。
こうした事態に陥らずに済むよう「そもそもクレーマーが入居してくるような安い物件にしない」ことも重要といえます(基本的に安い物件ほどクレーマー率が高くなります)。
まとめ

クレーマーを退去させる方法はあるものの、どの方法も大家さん側に相当な負担がかかります。このような作業は「やらずに済むのが一番いい」ですし、そもそもクレーマーが入居するような賃貸管理をしないのがベストです。
そのような「安定した運営」をするためには、やはり管理会社のようなプロに任せるのが、一つの有力な選択肢。その依頼先としておすすめできる一社が、上の画像の「武蔵コーポレーション」です。
同社は13,000戸という豊富な管理戸数を誇りつつ、入居率97%という高いパーセンテージを残しているのが特徴。賃貸管理・経営のノウハウを豊富に持っているため「クレーマーがそもそも入居しないような物件」の運営ノウハウにも長けています。
「そのような会社に管理の話を聞いてみたい」という方は、一度同社の公式サイトをチェックしていただくといいでしょう。対象エリアは茨城県以外の関東全域のため、このエリア内の大家さんには、特に参考にしていただけるかと思います。