「マンションの管理会社の良し悪し」というのは、ほとんどの人にとってわからないもの。そのため、管理会社の変更を検討しているときも「選び方がわからない」ということが多いでしょう。
この記事では、そのような個人・管理組合の方々のために「マンション管理会社の選び方」を解説していきます。この記事を読んでいただくことで、より誠実でコスパの良い仕事をしてくれる、良い管理会社を見つけていただきやすくなるでしょう。
目次
マンション管理会社を選ぶときに見るべき9つのポイント
マンションの管理会社を選ぶときは、下の9つのポイントを見ましょう。
以下、それぞれのポイントについて説明していきます。
フロントマンの経験・資格・人格に問題はないか
まず、フロントマンが「管理業務主任者」などの資格を持っていることが重要です。その会社のフロントマン全体での資格取得率が80%以上あれば、その管理会社は「合格ライン」とされます。
もちろん、管理会社が嘘をつく可能性もあります。しかし、フロントマンとしても嘘の数字は言いづらいものであり、そのような営業を会社が長く続けることは難しいものです。そのため、全く聞かないよりは「ある程度参考になる数値を得られる」と思ってください。
人格については「実際に接してみた印象」で判断するしかありません。当然「最初だけ感じが良い」フロントマンもいるでしょう。
そうした「最初だけの誠実さ」を見抜く方法として、フロントマン1人当たりの担当物件数を見るといいでしょう。これが15を超えるようであれば「多すぎ」であり、フロントマンがそれぞれの物件に誠実に対応することは難しいといえます。
(全部小型の物件なら別です。あくまで平均的な規模の物件で15ということです)
問題があったときに担当者の変更をできるか
「会社自体は良いのに、フロントマン個人に問題がある」というケースもあるでしょう。そのような場合は、担当者を変更させられるルールにしておく必要があります。
会社としては、当然「良いフロントマンを派遣する」と最初に約束するわけですから、このルール設定を断る理由はないはずです。
詳細な月次報告書を提出してくれるか
一般的に、管理会社は毎月「月次報告書」を理事会に提出します。この報告書のレベルによって、その管理会社の能力や信頼性を測れます。
もちろん、実際の管理が始まっていない以上「本物」の月次報告書はまだ見られません。しかし「サンプル」を提出してもらうことはできます。
- どんなフォーマットなのか
- 記入されている・されていない項目は何か
- コメントなどはどこまで詳しく書き込まれるか
ということを、サンプルでチェックしましょう。もちろん、これも「サンプルだけ良いものを用意する」という可能性もあります。
しかし、そのときは「最初のサンプルとクオリティが違う」と指摘することも可能です。あまりにレベルの違うものは管理会社としても提出できないため、最初のサンプルは「ある程度信用していい」といえるでしょう。
適切な議案書を作成してくれるか
総会や理事会で提出される議案書も、そのレベルを事前にチェックしましょう。これは本来「実際の議題に合わせて書く」ものなので、月次報告書よりは「サンプルを出すのが難しい」ものになります。
そのため、あくまで参考程度ですが、
- 文書自体は必ず作成してくれること(作成しない管理会社も多い)
- 一定のクオリティを保ってくれること
を確認しましょう。クオリティについては、たとえば「議案を箇条書きするだけ」ではなく「その詳細も文章・写真で説明してくれる」議案書が良いといえます。
一言でいうと、議案書というより「会議資料」のレベルで作成してくれる管理会社やフロントマンは、信頼できるといえるでしょう。
滞納への対処方法と体制が的確か
管理費を滞納する人への督促は、基本的に管理会社の仕事です(管理を委託するなら)。そして、
- この滞納への対処方法はどうなっているか
- 効果的な体制・ルールになっているか
という点をチェックしましょう。特に客観的に測れるのは「体制とルール」です。
体制 | 督促専門の部署があるか |
---|---|
ルール | 何カ月まで、どのような頻度・方法で督促をしてくれるか |
まず、専門の部署があるだけで「督促に力を入れている」ことがわかります。次に、ルールについては下のような点を確認します。
- 期間(相場は6ヶ月なので、できればそれ以上)
- 回数(月に何回督促するのか)
- 方法(電話か、書面か、あるいは両方か)
- やり方(電話なら「出るまでかける」など)
その他「6カ月以上の滞納で法的措置に入る」など、細かいルールを多く決める必要があります。そのようなルールを厳しく設定し、実行を約束してくれる管理会社なら信頼していいでしょう。
(実行しなかった場合、今度はその管理会社の責任問題になるため、約束された督促は高確率で実行してもらえるものです)
管理規約の改善案を出してくれるか
マンションの管理規約は、築年数の経過とともに改善されるべきものです。これが「古いまま放置されている」というマンションは少なくありません。
管理会社を変更するのであれば、こうした管理規約の改正についても、試しに提案してもらうべきです。マンションの立場で親身になってくれる担当者なら、質の高い提案をしてくれるでしょう。
逆に、そこで大した提案が出ないようであれば、管理を委託した後も期待はできないといえます。もちろん、これは担当者が仕事を獲得するための「サービス」のような仕事になるため、事前の段階では過剰な要求はできません。あくまで「サンプルの延長」のような意味合いで、軽く尋ねてみましょう。
修繕にどこまで対応してくれるか
修繕業務については、下の3点をチェックしましょう。
- 毎回の小規模修繕の提案を誰が行うのか
- 長期修繕計画の作成は有償か無償か(有償ならいくらか)
- 大規模修繕にどのように関わるのか
毎回の修繕は「水道の故障」などですが、このとき「修繕専門の部署・担当者」が見てくれるのかをチェックする必要があります。たとえば、
- 一級建築士
- 一級建築施工管理技師
などの資格を持っている社員さんが、修繕の度に別途担当してくれるなら安心できるでしょう(あるいは、フロントマンが最初からこの資格を持っている)。
超規模修繕計画は、有償なら相場が30万円となります。大規模修繕については、
- その管理会社にすべて丸投げできるのか
- 工事業者は管理組合で選ぶ必要があるのか
- ↑(この場合、管理会社はサポート役に回る)
といった点を確認しましょう。
設備点検への対応は充実しているか
トラブルが起きた場合の対応や、定期的な設備点検について、どこまで管理会社が関わってくれるのかをチェックします。このレベルは下の5つの段階に分かれます。
レベル1 | 立ち会いなし(工事・点検業者のみ) |
---|---|
レベル2 | 管理人が「勤務時間内のみ」立ち会う |
レベル3 | 管理人が「勤務時間外でも」立ち会う |
レベル4 | 管理会社の「フロントマン」が立ち会う |
レベル5 | 管理会社の「技術担当社員」が立ち会う |
管理人さんにしても、フロントマンや技術担当社員にしても「誰かの立ち会い」があると、業者も手抜きをしにくくなります。また、当然ながら「部屋に侵入しての悪事」なども働きにくくなります。
レベル4のフロントマンは、管理人よりも設備の知識は乏しいことがあります。しかし「状況をしっかり把握してくれる」「物件の管理に責任を持っている」という点で、高く評価できる姿勢です(もちろん、管理人も一緒に立ち会うのが理想です)。
レベル5の「技術担当社員の立ち会い」は、ベストのパターンです。
- 技術的なことがわかる
- 管理会社として責任を負ってくれる
という点で、ここまでの対応を約束してくれる管理会社なら、信頼できるでしょう(もちろん、その分費用が高くなることもあるでしょうが)。
諸経費の負担を明瞭に詰めてくれるか
以下のような諸経費を、組合と管理会社のどちらが負担するのか、という点も「地味に重要」なものです。これ自体は「最終確認」というべきないようですが、こうした部分も細かく明瞭に詰めてくれる会社であるか、というのは選定の重要な基準になります。
- 管理人室の電気代・電話代
- 什器備品類(机・ロッカーなど)
- 清掃用具
- 消耗品(洗剤・文房具など)
- 管理費引き落とし手数料
- 緊急業務の出張費
これらの出費は以外と大きいものです。たとえば「引き落としの手数料」は、「全戸分・毎月」となると、たとえば100戸のマンションで1回100円なら、年間で12万円が引き落としの手数料に消えます。これだけあれば、ごく小さな修繕を1~数カ所、毎年できるでしょう。
消耗品についても、たとえば資料作成のコピー代などが高くなります。「30ページの資料×100戸建分=3000ページ」としたら、1枚10円でも3万円になるわけです。その資料作成が年に2回あれば、年間6万円です。
このようなところも曖昧にせず、細かく説明してルールを決めてくれる管理会社なら、最後の契約の段階まで進んでいいでしょう。
管理会社のチェックリスト~10項目を解説!~
管理会社の良し悪しを判断するときも「チェックリスト」は相当に役立つものです。チェックリストがすべてではありませんが、わかりやすい指標になるでしょう。
ここでは、そのチェックリストとして9つの項目を下記のように説明します。
- 提案…コスト削減などの案を出してくれるか
- 担当物件数…1人当りの数が多くないか(少ない程いい)
- 管理員…服装・言葉遣い・管理室の整頓は適切か
- 清掃…エントランス・廊下・照明など各部が綺麗か
- セキュリティ…防災センターはどこか、災害時対応はどうか
- 専有部…室内機器点検・各戸インスペクション等があるか
- 緊急対応…24時間・365日か、内容はどこまでか
- 督促…効果的な方法・頻度か、対応期間は長いか
- 定期点検…内容・費用が明確か、信頼できるスタッフか
- 親睦…組合のチームワーク向上に務めてくれるか
以下、各項目の解説です。
提案…コスト削減などの案を出してくれるか
ご自身のお仕事や家事を想像すればわかると思いますが、真面目に仕事をしていれば必ず「提案」が必要になるはずです。たとえば共有部全体の電源を管理する設備は、15年ほど前のものを最新の機器に変えるなどすると、共有部の電気代が大幅に安くなる、などの例があります(これは筆者が理事をしているマンションで最近実行された改善です)。
もちろん、こうした提案がただの「売り込み」ということもあります。管理会社やディベロッパーが売り込みたいものを売ってくる、ということです。
提案のメリット・デメリットをわかりやすく説明してくれるか
親身な提案と売り込みの違いを見抜くには、やはり「わかりやすさ」が重要です。本当に良いことであれば、自信を持ってそれをわかりやすく伝えられるはずです。
もちろん、デメリットもあるでしょう。たとえば「初期費用がかかる」などです。しかし、そうしたデメリットもすべてわかりやすく明かした上で「トータルでこのようなメリットが生じる」ということを、わかりやすく説明してくれるなら信用できます。
担当物件数…1人当りの数が多くないか(少ない程いい)
フロントマンが1人で管理する物件が少ないほど、サービスは良くなります。逆に、1人で担当する物件が多い会社ほど、サービスが雑になるものです。
ごくまれに「1人でもすべてのマンションに良いサービスを提供している」というフロントマンも見えるでしょう。しかし、そのようなスーパーマンは稀です。
たとえば、ある大手の管理会社は「1人あたりの担当棟数は平均12物件まで」としています。大手がPRポイントとして掲げるほどですから、この数字だったら「適正値」といえるでしょう。
(その大手の会社が本当にその通りとしているかは置いておき、1人12物件までなら、業界的に適正値ということです)
管理員…服装・言葉遣い・管理室の整頓は適切か
当然ながら、管理人さんの良し悪しは、マンションの住民全体の生活に影響を与えます。そして、この管理人さんの「質」と、管理会社の質は比例します。
良い管理会社なら「管理人さんがしっかり仕事をしているか」をチェックします。また、そもそも選別や採用の段階で「類は友を呼ぶ」ので、いい人しか採用されないのです(いい管理会社であれば)。
このため、管理人さんの対応が良いマンションは、管理会社も良いといえます(絶対ではありませんが、高確率でそういえます)。
清掃…エントランス・廊下・照明など各部が綺麗か
これは管理人さんの対応とリンクしますが、清掃が行き届いているマンションは、管理会社の質も高いといえます。「部屋は心を映す鏡」といわれますが、マンションの清掃状況にも「管理会社・管理人さんの心が現れる」といえるでしょう。
特に日常チェックしやすい場所としては、エントランスや廊下、照明などがあげられます。これらが汚ければ、通常チェックしにくい場所は、さらに汚くなっていると考えていいでしょう。
もちろん、住民たちが共有部分を汚く使っているのに、管理人さんや管理会社だけに高いモチベーションを求めるのは間違っています。住民も全員が「マンションを大事に、綺麗に使う」という意識が重要ですが、そうした意識を持った上で、管理会社がマンションを清潔に保ってくれているかを見るようにしましょう。
セキュリティ…防災センターはどこか、災害時対応はどうか
セキュリティ面で安心できるということも、管理会社を選定する上での大きな要素です。このあたりは「トラブルが実際に起きてみないとわからない」ことも多いのですが、事前にチェックできる点としては、以下のものがあります。
- 監視をしている防災センターはどこか
- 24時間・365日監視してくれているか
- 災害時の対応・出動体制はどうなっているか
対応してくれる内容については、どこでも概ね共通するものですが、たとえば住戸内の火災やガス漏れ、エレベーターや受水槽のトラブルなどがあります。
専有部…室内機器点検・各戸インスペクション等があるか
廊下・階段・ゴミ捨て場合などの共用部だけでなく、専有部についてもサービスがあるのが理想です。具体的には以下のようなサービスが充実していると良いでしょう。
- 室内設備機器の定期点検
- 住居全体の診断(インスペクション)
- ハウスクリーニング
- 割安でのリフォームサービス
もちろん、こうしたサービスは上を望むときりがないものです。そして、サービスが手厚くなるほど管理費も高くなります。
そのため、最終的には「管理費とのバランスが重要」です。同じ管理費の中で、こうしたサービスをどこまでしてくれるかをチェックするようにしましょう。
緊急対応…24時間・365日か、内容はどこまでか
普通に生活していても、マンションでは以下のようにさまざまなトラブルが起きるものです。
- 水が止まらない
- トイレやお風呂の排水溝が詰まって流れない
- 鍵を持たずに出てしまい、あるいは紛失してしまい、中に入れない
こうしたトラブルについて、24時間・365日対応してくれることは必須といえます。内容にもよりますが「よくあるトラブル」であれば、常時対応してくれる管理会社を選ぶべきでしょう(特に水のトラブルなどは、半日の放置でも大損害につながる恐れがあります)。
こうした緊急対応は、管理会社ではなく専門の会社が委託されて請け負っているものですが、その委託先の会社が信頼できるかどうかもチェックしましょう。
督促…効果的な方法・頻度か、対応期間は長いか
どのマンションでも、ある程度の未収金は発生しています(現状はゼロでも、過去に発生したことはあるでしょう)。
未収金が現時点であるということは、その住民の方は「来月も払わない」恐れがあり、その状態が続くと「半年~1年分未収」などの事態に陥ることもあります。裁判などにかけても、相手が一文無しであれば最終的に「どこからもお金が入らない」こともあるものです。
そうならないためには、未収が発生した早い段階で、的確に対応する必要があります。長くとも2カ月程度の未収で済んでいれば、上記のように大きな問題には発展しないものです。
対応期間は平均6カ月ですが、長く対応してくれるほど回収しやすくなります。こうした期間も含め、未収金の回収に優れた管理会社を選ぶことも、選定のポイントの1つといえるでしょう。
定期点検…内容・費用が明確か、信頼できるスタッフか
管理会社が建物を定期点検することは、当然といえます。良いメンテナンスをするには定期的なチェックが欠かせないため、本当に良いサービスをしようと思っている管理会社なら「必ずやろうとする」ものです。
そのため、ほとんどの管理会社は定期点検をします。違いが出るのは、その「質」です。
- どのような点検をするのか
- 費用は明確か
- どの会社、どのようなスタッフが点検するのか
ということもチェックしましょう。費用については、無償であれば良いとは限りません。たとえ有償であっても「信頼できるチェックをしてくれる」ことが最重要です。
最終的には、他の項目で述べている点も含めて「総合的に信用できる管理会社かどうか」という点に尽きます(検査=インスペクションの専門的な部分は、素人ではどうしてもわからないことが多いので)。
親睦…組合のチームワーク向上に務めてくれるか
マンション住民の親睦は、ある程度必要です。組合も一つの「チーム」であり、そのチームワークがいい集団と悪い集団では、長期の運営の結果がまったく異なってきます。
そのため、組合の活動に積極的な住民を中心に、チームワークを高めるように親睦を、適度に図ってくれるフロントマンが望ましいといえます。ただ、会社の「飲ミニュケーション」でも言えることですが「馴れ合い」にならないよう、線引きをできることが必要です。
このような「付かず離れず」の距離をうまく保って、チームワークを高めてくれるフロントマンは信頼できます(なお、悪質な管理会社は組合のチームワークをわざと乱し、自分たちに都合の良い「派閥」をつくることもあります)。
マンションの3つの管理方式
マンションの管理方式は、下の3つに分かれます。
簡単に書くと、管理会社に委託する領域が「全部・一部・ゼロ」のいずれか、ということです。それぞれどのような方式か、詳しく説明していきます。
全部委託…すべて管理会社に一任
これは文字通り「全部管理会社に任せる」やり方です。全面委託とも呼ばれます。また、委託の主流はこの全部委託なので、単純に「委託管理」ということもあります。
全部委託(委託管理)のメリットとデメリットは、SUUMOが下記のように説明しています。
管理組合の理事等の手間や負担が少なく、管理会社による効率的な管理が期待できるというメリットがある。ただ、管理委託費が高めで、管理組合の管理意識の低下を招く懸念もある。
委託管理(SUUMO)
箇条書きでまとめるとこうなります。↓
メリット | 手間・負担が少なく効率的 |
---|---|
デメリット | 委託費がかかる・住民の管理意識が低下することも |
何かをプロに依頼する以上、費用がかかるのは当然です。意識については、委託したら必ず下がるというわけではありませんが、最低限「チェックを皆でしっかりする」などの仕事はこなさなければ、低下のリスクもあるでしょう。
逆にいえば、そのようなデメリットにさえ注意しておけば、全部委託のメリットは大きいといえます(だからこそ、大部分のマンションでは全部委託が選ばれているわけです)。
一部委託…できる業務を組合で行う(住民に専門家がいる等)
一部委託の例としては、主に下の3パターンがあります。
- 会計業務のみ
- 会計業務+定期総会業務
- 会計業務+定期総会業務+建物・設備の緊急対応
これらに加えて、4つ目のパターンとして「大規模修繕の推進業務」の委託があります。大規模修繕は15年に1回程度なので、これは「臨時の委託」となります。
(もちろん、それまでの修繕積立費の管理などは「会計業務」に含まれます)
上記は「主なパターン」ですが、マンションの実情に応じて「緊急対応のみ」など、さまざまなバリエーションが考えられます。特に組合の中に不動産会社の社員さんや社長などの専門家がいる場合、一部委託が有効なケースも多いといえるでしょう。
自主管理…すべて組合で行う
管理会社に依頼せず、すべての業務を住民で行うというものです。この割合は、全国で約9%となっています。反対側の「依頼する」が、下の説明のように「約91%」なので、そう言えます。
今回の調査では「管理会社に委託している」と回答した人が90.9%とほとんどを占めました。
540人に聞いたマンション管理のトラブル事例【マンション管理実態調査1】(ライフルホームズ)
上記のライフルの説明の「委託する」というのが、
- 「全部委託だけ」なのか
- 「一部委託も含むのか
はわかりません。もし一部委託を含んでいないなら、含むことで98%近くまで行きそうです。しかし、それはさすがに高すぎるので、おそらく上記の90.9%という数字は「一部委託も含んでいる」でしょう。
となると、自主管理をしているマンションは「全国で約9%」といえます。
本当に1割もあるのか?
一般のイメージでは「自主管理はそんなにない」でしょう。これについて、上のライフルホームズの記事でも、「最近建てられたマンションで自主管理は少ない」と書かれています。
- かなりの築年数が経過したマンション
- 規模の小さいマンション
のみに自主管理が見られるということです。
- マンション管理会社があまり担当したがらない
- マンションの住民側に、管理委託費を払うだけの余裕がない
ということですね。このようなマンションはいわゆる「廃墟マンション」になりがちです。そして、そのようなマンションを、マンション管理士連合会などの公的な団体が、健全化させている事例も紹介されています。以下のように、国交省が紹介している公的な事例です。
【参考】【PDF】自主管理が失敗していたマンションの健全化に、マンション管理士連合会が取り組んだ事例(国土交通省)
このような支援の事例があるということは、逆にいえば「自主管理はそれだけ難しい」ということ。「管理委託費が払えない」という財政的に逼迫した状況でなければ、できるだけ何らかの形でプロに委託するべきといえます。
管理会社・3種類の違い~デベ系・独立系・ビルメン系~
管理会社のタイプは、大別して3通りです。
ここでは、それぞれのタイプの特徴について解説していきます。
デベロッパー系…大手建設会社のグループ企業(子会社等)
デベロッパーとは開発業者のことです。マンションに関していえば「最初にマンションを建設する会社」というとわかりやすいでしょう。
デベロッパーには「メジャー7」と呼ばれる、大手7社があります。以下の各社です。
- 住友不動産
- 大京穴吹
- 東急不動産
- 東京建物
- 野村不動産
- 三井不動産レジデンシャル
- 三菱地所レジデンス
これらの会社名は、日本人で社会人であれば、誰もが知っているでしょう。そして、これらに続く大手デベロッパーとして、以下の会社があります。
- 森ビル
- NTT都市開発
- 阪急阪神不動産
- 近鉄不動産
- 大成有楽不動産
この他にもまだ中堅デベロッパーが無数にありますが、これらの会社には「系列のマンション管理会社」があります。
- 自社でマンションを建設し、
- その管理をグループ内の管理会社に任せる
というやり方です。もちろん、自社で建てたマンションだけでなく「よそのマンション」を、ディベ系が管理することもあります。
ディベロッパー系のメリット・デメリット
まず、メリットは下のとおりです。
- 設計情報が豊富にある(自社グループで建てたので)
- 大企業なので財政面で安心(突然倒産したりしない)
- 責任の所在が明確(建設からグループ会社なので)
逆にデメリットとなるのは下の点です。
- 親会社のデベロッパーに対して弱腰
- 委託費が高い(ブランド力があるため)
- 積極的な提案が少ない(営業しなくても仕事があるので)
たとえば管理している中で「建設の不備」が見つかったとします。この場合、通常の管理会社であれば、そこを突いて建設した会社(デベロッパー)から、何らかの保証を得るなどの方法もとれるものです。
しかし、デベ系の管理会社ではそれができません。そのように「親会社にとって都合の悪いこと」を、デベ系は避けなければならないためです。
このため、必ずしも住民にとってベストの提案をしてくれるとは限りません。政府でもしばしば「第三者委員会」というものが組織されますが、マンションの管理でも「第三者」を入れることは大事なのです。
独立系…マンション管理を専門店に請け負う会社
独立系は、デベロッパーと関係なく「マンションの管理を専門に請け負う会社」です。デベ系のように「マンションを最初から管理している」ということは少なく、大抵は「他の管理会社からの乗り換え」によって仕事を獲得します。この乗換えを「リプレイス」といいます。
リプレイスによって仕事を獲得するため、基本的に独立系は価格が安くなります。一番わかりやすい「安さ」で売り込むのが効果的なためです。
ただ、普通のビジネスと同様に「安かろう、悪かろう」の管理会社も存在します。そのような業者に騙されて契約しないよう、サービスの内容や、担当者個人の信頼性、会社全体の評判などをよく見極める必要があります。
独立系のメリット
まずメリットは下のとおりです。
- 委託費が安い(デベ系より)
- 独自サービスが多い(デベ系より)
- 他社で断られた物件でもOKなことが多い
最後の「他社で断られた物件」については、大抵「老朽化したマンション」です。これについては、デベ系は基本的に受けません。彼らは規模が大きい分「高い売上を上げなければ会社を維持できない」ためです。
大型の動物が「たくさん食べなければ体を維持できない」というのと同じです。「大手だから何でもできる」ということはなく、むしろ「大手だから小さな仕事はできなくなる」わけですね。
「そのような仕事でも受けられる」というのが、独立系のメリットです。
独立系のデメリット
デメリットは主に下のようなものです。
- 建物設計の情報が不足することがある
- 安い分、サービスが悪い会社も存在する
- 途中で管理会社が交代すると、責任の所在が曖昧になることも
デベ系と違って、建設会社がまったく別のグループなので、設計の情報は不足しがちです。法的に必要な情報であれば、正規の請求によって出してもらえますが、手間と費用がかかります。
また、独立系は大抵「リプレイス」になるので、その「前の会社」からの責任の引き継ぎが曖昧になることがあります。何かトラブルが起きたとき「これはどっちの会社の責任なのか」という点が、問題になりやすいわけです。
これも最終的に解決はできますが、大きいトラブルだと「責任の所在を明確にする」だけでも、手間がかかることがあります。逆にいえば、こうした責任の所在をどうするかを「最初に明確に説明してくれる」独立系の会社であれば、信頼できるということです。
(そもそも、リプレイスをあまり考えない日本人が考え始める時点で、現状の管理会社は「悪い」可能性があります)
【参考】マンション管理費はこんなに違う 攻める独立系、守るデベロッパー系(ダイヤモンドオンライン)
ビルメンテナンス系…本業が清掃・設備管理の会社
これは、ビルやマンションのメンテナンスをする「設備・清掃の会社」です。マンション管理の中でも「実作業」を担当する会社といえます。
こうした会社が、実作業だけでなく会計業務のサポートなど「全体の管理」も手伝うのが「ビルメン系」の管理会社です。
ビルメン系のメリット・デメリット
まずメリットは下のようなものです。
- 設備管理・清掃などのハード面に強い
- 建築・設備の有資格者が多い
「ビルメンテナンス」という出自を考えれば当然ですが、上記のように「設備や清掃に関する作業に強い」のが特徴といえます。逆にデメリットは下のとおりです。
- マンション専門の有資格者が少ない
- 理事会支援など「ソフト面」のサポートが弱い
一言でまとめると「ハードに強く、ソフトに弱い」ということです。
- ソフトに強い理事が揃っている
- そのため、委託費用はハード系に回したい
というマンションの場合、ビルメンテナンス系が向いているといえるでしょう。要は通常の人間関係と同じで「自分に欠けているものを補ってくれる会社を選ぶ」ということです。
規模~大手・中小それぞれのメリット・デメリット~
規模については「大手の方がいい」と考える人や組合も多いでしょう。しかし、必ずしもそうとは限りません。ここでは、大手・中小それぞれのメリットとデメリットを解説していきます。
大手のメリット・デメリット
一言でいうと、大手は「ローリスク・ローリターン」といえます。
メリット
- 多くの人が選んで「一応何とかなっている」という点では安心
- 反社会勢力である確率は限りなく低い(上場時などの審査が厳しい)
デメリット
- 中小と比較して「非常に良い」ことは少ない(大体の水準が事前に予想できる)
- コスパが悪いことが多い(総務・人事などの人件費が高い)
- デベ系だと、親会社のデベロッパーの利益を図ることもある
大手・中小は一概に「どちらが良い」という答えがありません。最終的には「マンション次第・会社次第」となります。
ただ、上記のそれぞれのメリット・デメリットは、どのようなケースでもほぼ共通するもの。そのため、これらの内容を意識して、管理会社を比較していただけたらと思います。
中小のメリット・デメリット
中小は大手の逆で「ハイリスク・ハイリターン」といえます。
メリット
- コスパが良い(総務や人事などの間接コストが小さい)
- 大手よりも「非常に良い」会社が見つかりやすい(大手の水準はある程度予想できる)
- 地域密着型の会社なら、特に親身になってサービスしてくれる(そうでないと地元で生活できなくなるので)
デメリット
- 良くも悪くも「どうなるかわからない」(選んでいる人数が少ないので)
- 反社会勢力である確率がゼロではない(少なくとも大手よりは高い)
知名度で選ぶべきでない3つの理由
マンションの管理会社に限らず、私たちはあらゆる場面で「知名度」を重視します。確かに、高い知名度を手に入れることも、維持することも簡単ではありません。そのため、ある程度の信頼の証になるのも確かです。
しかし、知名度だけでマンションの管理会社を選ぶと高確率で失敗します。その理由は下のとおりです。
以下、それぞれ解説していきます。
知名度が高い会社は「強気」で交渉できる
知名度の高い会社は、それだけマンション管理の契約を「取りやすい」ということ。そのため、1件のマンションの契約を逃しても、それほど痛手がありません。
多少の痛手はありますが、知名度の低い会社に比べれば「それほど痛くない」のです。そのため、さまざまな条件の交渉で組合側が不利になることがあります。
知名度は「強引な宣伝」で獲得している場合もある
ネットの普及によってある程度情報は民主化されましたが、まだまだ「メディアによるコントロール」は行われています。
- ランキングをお金で買う
- 広告代理店にPR記事を書いてもらう
などの方法で、自社の知名度を高める、評判が良いように見せるという管理会社は多く存在します。これはどの業界でも行われていることであり、むしろ「自分の本業の会社がそれをやっている」という方も見えるでしょう。
そのため、こうした努力は必ずしも悪いものではありません。ただ、管理を依頼する側としては「そうして獲得された知名度である可能性を考えなくてはいけない」ということは確かです。
デベ系なら、親会社の利益を優先することもある
これは聞いたことのある人が多いでしょう。建設会社などの「デベロッパー」を親会社に持っている管理会社を「デベロッパー系=デベ系」といいます。
こうしたデベ系の管理会社は、組合よりも親会社の利益を優先することがしばしばあります。そのような会社ばかりではありませんが、そのような会社もあるのは事実です。
そして、デベ系は総じて「親会社のブランドのおかげで知名度が高い」ものです。同じ知名度の高い会社でも、その知名度が「親会社のデベロッパーによるもの」だった場合、無条件で信じるべきではないといえるでしょう。
マンション管理会社のランキング(部門別ベスト5)
マンションの管理会社を選ぶとき、気になるのは「ランキング」でしょう。ランキングは地域や「誰が選ぶか」によっても異なります。
ここでは、それらの諸条件ごとに5つのランキングで、ベスト5の管理会社を紹介します。
首都圏…野村・明和・大和・三井・合人社
オリコンが2019年に発表した首都圏の分譲マンション管理会社のランキングは、下の通りです。
- 野村不動産パートナーズ
- 明和管理
- 大和ライフネクスト
- 三井不動産レジデンシャルサービス
- 合人社計画研究所
【参考】首都圏・分譲マンション管理会社 顧客満足度ランキング(オリコン)
東海…大京・三菱・野村・日本ハウズ・合人社
時事通信社の記事(集計したのはオリコン)によれば、東海地方では以下のようなランキングになっています。
- 大京アステージ
- 三菱地所コミュニティ
- 野村不動産パートナーズ
- 日本ハウズイング
- 合人社計画研究所
【参考】2019年『分譲マンション管理会社(首都圏/東海/近畿/九州)』ランキング発表(時事ドットコム)
近畿…三井・住友・浪速・東急・阪急阪神
後述のPR TIMESの記事によれば、近畿地方では以下の5社げベスト5に入っています。
- 三井不動産レジデンシャルサービス関西
- 住友不動産建物サービス
- 浪速管理
- 東急コミュニティー
- 阪急阪神ハウジングサポート
【参考】PRTIMES|【オリコン顧客満足度R調査】2019年『分譲マンション管理会社』
理事経験者…三井・野村・東京建物・住友・長谷工
後ほど紹介する産経新聞の記事によれば、理事経験者による管理会社の満足度ランキングは、下記のようになっています。
- 三井不動産レジデンシャルサービス
- 野村不動産パートナーズ
- 東京建物アメニティサポート
- 住友不動産建物サービス
- 長谷工コミュニティ
【参考】入居者による 第11回「管理会社満足度ランキング」発表(産経新聞)
10万戸未満…東京建物・モリモト・住商・明和・双日
@DIMEが紹介するランキングによれば、10万戸未満のマンションでの管理会社ランキングは、以下の通りです。
- 東京建物アメニティサポート
- モリモトクオリティ
- 住商建物
- 明和管理
- 双日総合管理
【参考】入居者による管理会社満足度ランキング!マンション購入時に頼りになる優良企業はどこ?(@DIME)
マンション管理会社のワーストは?
ランキングで気になるのは「ベスト」だけではないでしょう。むしろ「ワーストが気になる」という方も多いかと思います。また「評判が悪い会社を知りたい(知って避けたい)という方も多いでしょう。
ここでは、そのような疑問に答えるため、下の3つの内容を解説します。
これらの内容を読んでいただくことで「悪評の立っている管理会社」を避けて選ぶことができるでしょう。
ダイヤモンド社などが定期的にランキングを発表
ダイヤモンド社は、以下のような記事で定期的に「マンション管理会社のランキング」を発表しています。
【参考】東急コミュニティーが1位 マンション管理会社ランキング94(ダイヤモンド・オンライン)
これは、ダイヤモンド社も「下位の会社が業界のワーストを意味するわけではない」としているものです。そのため、そのまま「ワーストはどこか」を判断するものではありません。
しかし「なぜその結果になったのか」という「過程」を見ると、参考になるでしょう。自身が住むマンション(あるいは関わるマンション)にとって、その「過程」の要素が重要かどうかを見るべきです。
重要な要素である | ワーストの可能性がある |
---|---|
重要な要素ではない | ワーストとは限らない(他の部分も見て決めるべき) |
となります。もちろん、最終的にランキングはあくまで「大量にある参考データ」の一つに過ぎません。ただ、データは多すぎない程度に多い方が良いので、そのように「たくさん集めるデータの一つ」として考えるといいでしょう。
管理会社で評判が悪いところの社名は?
評判の悪い管理会社は、かなりあります。検索してみると会社の実名とともに多数出てきますが、
- 同じ会社でも支店によって評判が違う
- フロントマンによって評判が違う
ということがあります。また、同じ支店についていい評判・悪い評判の両方があるというケースも見られます。
ネットでは、自社や自店の評判が悪くならないよう、自作自演の書き込みをする会社・店舗が多く見られます。そのため、いい評判があっても事実とは限りません。逆に悪い評判も「他社によるネガティブキャンペーン(ネガキャン)」という可能性もあります。
最終的には、双方の書き込みをよく読み込んで「自分の目で判断する」しかありません。実生活でもWEB上でも、人間がいつまでも嘘をつき続けるのは難しいものです。
管理会社がステマとして「良い評判」を書き込んでいる場合も、時間が経てば徐々に「ボロが出てくる」「形勢が不利になる」ということが多いので、判断するための期間に余裕があるならば、その余裕の範囲で継続して「ウォッチ」するといいでしょう。
分譲マンションの管理会社で最悪といわれる上場企業とは?
多くの管理会社は良心的かつ誠実にお仕事をしてくれます。しかし、多数の会社がある以上、残念ながら「そうでない会社」も一部で存在します。
そして、WEB上を探せばそのような会社の評判が出てきます。たとえば「分譲マンション 管理会社 最悪」と検索すると、質問に続く回答の中に、さまざまな会社さんの名前が出てきます。
その中の一社(上場企業)を検索してみると、キーワード候補に「悪質」と出てきます。それで出てくる情報を見ると、完全にブラックとは言えないまでも「ある程度グレーな部分はある」と感じられます。
ここでは一社の例のみを出しましたが、管理会社を決めるときも、
- その会社について悪評はないか
- その悪評は信頼できるものか
を見るようにしましょう。WEB上の評判の信頼性を測るのはなかなか難しいものですが、感覚的に「本当っぽい」と思えるものが多かったら、ある程度耳を傾ける価値があるでしょう。
まとめ
マンションの管理会社の選別は、それなりに手間がかかるものです。管理会社の信頼性を見極めるには、ある程度マンション管理の知識や設備に関する知識も必要になります。
大変ではありますが、向こう数十年のマンションでの生活を快適にできるか・できないかの境目ともなる重要な作業です。失敗しないよう、信頼できる管理会社(できるだけ複数の会社)に相談し、それらの会社を比較してベストの管理会社を探すようにしてください。
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