マンション管理会社の選定は、住民全員の生活を左右する重要なアクション。それだけに「失敗しない比較のポイント」を押さえて選びたいものです。
マンションの管理会社を比較するときは、主に下の3点に注目します。
上の3つの内容も、それぞれ見るべきポイントが、下のように細かく分かれます。
ジャンル | 見るべきポイント |
---|---|
サービスの質 | 8つ |
会社自体の信頼性 | 3つ |
費用・コスパ | 3つ |
この記事では、上のような比較のポイントについて、それぞれ解説していきます。これらの内容を読むことで、比較の方法が明確になり、ベストの管理会社を探しやすくなるでしょう。
なお、比較にあたって「ランキングを知りたい」という人も多いかと思います。ランキングについては、下の記事で詳しく紹介しています。

また「とりあえず、おすすめの管理会社を知りたい」という場合には、下記の「武蔵コーポレーション」をおすすめします。武蔵コーポレーションについては「まとめ」の段落でもご紹介します。
以下、「サービスの比較の仕方」から解説していきます。
目次
サービスを比較する8つの基準
「サービスを適切にしてくれるか」は、マンション管理会社の比較で特に重要な点です。同じ費用でも、サービスの内容によってその金額が適切かが変わるためです。
そのため、サービスの比較は欠かせないものですが、このときの基準は下の8つに分かれます。
- 財務・会計は明瞭か
- 管理・清掃の業務は適切か
- 建物・設備は適正に管理されているか
- 契約のルールは公正か
- 個人情報の保護は万全か
- 緊急時の対応は安心できるか
- 総会への支援は十分か
- 理事会へのサポート・指導は的確か
それぞれの項目がさらに詳細なチェックリストに分かれるものですが、ここれはその内容を、それぞれ紹介していきます。
財務・会計は明瞭か
まず、財務や会計については下の点を比較します。
それぞれの見るべきポイントは下のとおりです。
項目 | 見るべきポイント |
---|---|
管理方式 | 「原則・収納代行・支払一任」など方式が明記されているか |
通帳・印鑑 | 別々に保管されているか |
再委託先 | 会社・業務内容・費用などが明確か |
決算資料 | 毎月提出されているか |
会計分別 | 管理費・積立金の会計が分別されているか |
滞納対策 | 業務範囲・作業日程が明確化、1年以上の滞納がないか |
財務・会計は、管理会社の比較で特に重要な項目です。そのため、このジャンルについては他のジャンルよりも詳しく補足の説明をしていきます。
財産の管理方式は明確か
下のような方式の、どれを採用しているか明記されているかをチェックしましょう。
- 原則方式
- 収納代行方式
- 支払一任方式
また、部分的に併用することもありますが、その点も含めて明記されているか、本当にその通りになっているかをチェックします。
通帳・印鑑の保管
両方「分離」するのが鉄則です。通帳に関しては、
- 保管口座
- 収納口座
上記のどちらも「管理会社」が保管するべきとされます。印鑑は、理事長などが持って分離すべき、ということです。
再委託先の情報
再委託先、いわゆる「下請け・孫受け」の費用や業務内容が説明されているかをチェックします。
月次決算資料
毎月の管理組合に提出していることが絶対条件です。驚くかもしれませんが、入居者全員が運営に興味のないマンションでは、管理会社や理事長などがマンションを私物化し、この決算資料が提出されていないこともあります(めったにないケースですが)。
管理費と積立金の会計は、分別されているか
毎月の管理費と修繕積立金は、似ているようでまったくの別物です。
- 収支報告書
- 賃貸対照表
上記のような書類で、2つの会計が分別されていることが必要です。
滞納対策
管理費滞納が起きたときの対策は整っているか、をチェックします。管理会社の、
- 業務範囲
- 作業日程
が明確であるかをチェックしましょう。また、1年以上続くような滞納はゼロであるというのが、絶対条件です(このような長期滞納があれば、その督促システムは機能していないということなので)。
管理・清掃の業務は適切か
管理員の業務と、清掃の業務については、下の点を見ます。
- 勤務体制
- 教育体制
- 報告体制
- 掃除内容
それぞれの見るべきポイントは下のとおりです。
項目 | 見るべきポイント |
---|---|
勤務体制 | 日時・人数・休務日などのルールが明確かつ適切か |
教育体制 | 個人情報保護などの指導が十分か |
報告体制 | 清掃の対象部分ごとに報告されているか(階段・ゴミ捨て場など) |
掃除内容 | 掃き掃除・拭き掃除以外もあるか(除草・ドレーンごみ除去など) |
勤務体制は大抵「平日の日勤」です。24時間・365日体制は理想ではありますが、コストがかかりすぎるためです。また、トラブル対応については専門のセンターなどがあるはずなので、そちらが充実していればOKです。
報告体制は、全部まとめて「掃除完了」だと、どこか掃除できていなかったときに言い逃れができてしまいます。しかし、たとえば廊下を掃除していないのに「廊下完了」と報告することは、普通はできません。ただの手違いという言い逃れをしにくくなります。そのため「個別報告」が重要なのです。
掃除内容については、増えるほど管理費も高くなります。そのため、あくまで管理費とのバランスがとれているかを見ます。
建物・設備は適正に管理されているか
建物や設備の管理業務については、下の点をチェックします。
- 長期計画
- 保有資格
- 計画更新
- 日常提案
- 書類管理
- 法定点検
それぞれの詳しい見方は下のとおりです。
項目 | 見るべきポイント |
---|---|
長期計画 | そもそも長期修繕計画があるか(ない会社も稀にある) |
保有資格 | 有資格者が担当しているか |
計画更新 | 長期修繕計画が、5年ごとに更新されているか |
日常提案 | 日常の修繕提案と、長期計画が一致しているか(予算配分など) |
書類管理 | 修繕履歴・設計図書などの書類が、完全に保管されているか |
法定点検 | 法令どおりの時期・内容で実施されているか |
どのようなことでもそうですが、長期の計画は、最初のわずかなズレが、長期間続くことで大きな差になることがあります。いわゆる「ニアミス」です。
そのため、特に早い段階で長期修繕計画が適正化を、見極める必要があります。
契約のルールは公正か
契約内容については、下の項目を比較・見直しのポイントとします。
- レスポンス
- 書類発行
- 支払時期
- 契約期間
- 解約条項
- 契約修正
- 法令遵守
- 決定経緯
見るべき内容は下のとおりです。
項目 | 見るべきポイント |
---|---|
レスポンス | 質問への回答やトラブル対応が迅速か |
書類発行 | 仕様書・作業手順マニュアルなどの書類を交付してくれるか |
支払時期 | 作業完了後に、委託業務費を支払う仕組みになっているか |
契約期間 | 1年契約になっているか |
解約条項 | 3カ月前の予告で解約できるようになっているか(違約金などがないか) |
契約修正 | 規約の変更など、適切な修正提案が随時なされているか |
法令遵守 | 管理適正化法を遵守しているか(重要事項説明書の配布、契約書の交付など) |
決定経緯 | 複数の管理会社を比較して決めた会社か |
レスポンスなどは体感でわかりやすいでしょう。また、契約期間などは明確な「数字」の基準があるので、適正化どうかを判断しやすいといえます。
最後の決定経緯は意外に「放置」されている部分で、「どう決まったのか知らない」のであれば、本来見直さなければならないものです。そのため、管理会社の見直しを考えるときはまず「何で今の管理会社に決まったのか」という経緯を把握することも重要となります。
(真剣に見直しを考えている組合なら、自然とそれをするようになるといえますが)
個人情報の保護は万全か
管理員による個人情報保護については、下の点を見ます。
- 名簿管理
- 守秘義務
- 社員教育
- 防犯カメラ
それぞれの詳細は下のとおりです。
項目 | 見るべきポイント |
---|---|
名簿管理 | 管理・更新の方法が明確か |
守秘義務 | 書面化されているか |
社員教育 | 個人情報の取り扱いに関する社内教育があるか |
防犯カメラ | 取り扱いのルールが明確か |
情報の守秘義務は、書面化されていなければ規制が難しくなります。情報の流出被害などが発生した場合、ルールが書面化されていれば損害賠償の請求などがスムーズに進みます。
しかし、書面化していなければ難航し、賠償金額も小さくなることが多いものです。そのように、罪を犯す側の「プレッシャーが小さくなる」ため、こうしたトラブルが発生しやすくなります。そのため「書面化」が必要なのです。
緊急時の対応は安心できるか
日常のトラブルや災害時の対応については、下の点を見ます。
- 日常対応
- 防災グッズ
- マニュアル
- 施設リスト
- 各種警報
- 防災訓練
具体的に見るべきポイントをまとめると、下のようになります。
項目 | 見るべきポイント |
---|---|
日常対応 | 騒音・漏水などへの対応システムは整っているか |
防災グッズ | 備蓄があるか |
マニュアル | 災害用マニュアルが作成されているか |
リスト | 最寄りの交番・保健所などのリストが整備されているか |
各種警報 | 24時間体制で受信できるか、メンテナンスされているか |
防災訓練 | 1年に1度は開催されているか |
防災訓練については「やっていてもウチは参加しない」という家庭も多いかもしれません。実際、毎日忙しい人が多いと思うので、それもごく自然でしょう。
ただ、会社として「やっている」ということは重要です。少なくとも管理員やフロントマンなどは参加しているため、いざというときの対応力が全く異なります。そのため、防災訓練は「管理会社には必要」なのです。
総会への支援は十分か
総会への支援の体制については、下の点を見ます。
- 開催時期
- 日時設定
- 案内支援
- 議案書
- 議事録
- 送付先
具体的に見るべきポイントは、下のとおりです。
項目 | 見るべきポイント |
---|---|
開催時期 | 年度終了後2カ月以内に開催されているか |
日時設定 | 出席しやすい日時になっているか |
案内支援 | 出欠確認などの案内の支援を管理会社がしてくれるか |
議案書 | 日数の余裕を持って理事会に提出されているか |
議事録 | 総会が終わってから1週間以内に、理事長に提出されているか |
送付先 | 委任状・出欠表などの送付先が、組合管理ポストになっているか |
最後の「送付先」については、組合のポストに送られれば、これらの情報を「管理会社」ではなく「組合」が把握できます。しかし、管理会社が送付先だと、組合が正しい情報を把握できないのです。そのため、送付先は「組合の管理ポスト」であることが必要です。
理事会へのサポート・指導は的確か
理事会や理事長へのサポート・指導については、下の点を見ます。
- 開催頻度
- 活動周知
- 記録管理
- 理事長指導
- 法改正対応
見るべきポイントの詳細は、下のとおりです。
項目 | 見るべきポイント |
---|---|
開催頻度 | 毎月1回の開催を提案しているか |
活動周知 | 理事会の活動状況を、掲示や誌面などで組合員に伝えているか |
理事長指導 | 必要な事項をすぐに理事会に伝えるよう、理事長に指導をしているか |
記録管理 | 議案書・議事録などの保存と管理をサポートしているか |
法改正対応 | 法令などの改正に合わせて必要な行動を、理事長らに指導・提案できているか |
たとえば、リゾートマンションなど「住んでいる人が少ない」という場合、理事会を毎月開催することは難しいといえます。また、その他の事情で「毎月開催できない」というマンションの場合は、もちろん毎月でなくてかまいません。
ただ、管理会社としては「毎月開催したい」という姿勢を見せている方が信用できます。管理に関する問題も改善点も、理事会が多く開催されるほど、発見しやすくなるためです(問題のある会社はそれを恐れて、理事会を開きたがらないものです。
なお、これらのチェックポイントについては、下の記事でも詳しく解説しています。特に管理会社の見直しをしている組合の方などは、こちらの記事も参考にしていただけたらと思います。
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会社自体を比較する3つのデータ(見るべき指標)
マンションの管理会社を比較するときは「サービス」の比較と並んで「会社自体の信用性を見る」ことも重要です。そのときに見るべき指標は、大別すると3ジャンルに分かれます。
ジャンル | 見るべきポイント |
---|---|
業績 | 経営基盤の安定性を見る |
受託実績 | 実力や得意とする物件規模を見る |
資格保有者 | 人数と内容で社員のレベルを測る |
以下、それぞれの指標について解説していきます。
業績…経営基盤の安定性を見る
会社全体の業績については、下のような項目を見ます。
以下、それぞれの数字をどのように見るべきかを解説していきます。
資本金
資本金については、原則多いほど良いといえます。マンション管理の業界は、他の業界よりも動く金額が大きいため、中堅企業でも資本金1億円の会社がしばしばあります。
ただ、必ずしもそのレベルの資本金が必要かといったら、そうとは限りません。地方の小規模物件のみ扱う地域密着型の管理会社という場合は、資本金1000万円で十分なこともあります。理由は下のとおりです。
- 小規模な管理会社なら、資本金1000万円で十分
- 一般的に、中小企業で資本金1000万円は、十分に合格レベル
- ↑(名の知れた企業でも800万円程度のことはしばしばある)
- 資本金よりも「物件ごとに行き届いたサービスをすること」の方が重要
つまり小規模なマンションでは「この管理会社はお金があるか」よりも「うちのマンションを丁寧に管理してくれるか」の方が重要なのです。これは「気持ちの問題」ではなく、物理的にその方が重要ということです。
資本金が多いと税金コストが増える
一時期、シャープが資本金を「1億円に減資する」という計画を発表し、騒動になった末に「5億円」と修正したことがありました。経営陣がこのような減資を目指したのは、資本金が少ない方が税制の優遇を受けられ、経済的似有利だからです。
つまり、会社としてのブランドや体裁を気にしなければ「資本金は多すぎない方が良い」のです。そのため、下のような考え方も成り立ちます。
- あえて資本金1000万円にしておく
- それで税金コストを減らす
- 代わりに、サービスを手厚くする
この考え方は間違っていないといえます。既存顧客の組合といい関係を築いていれば、あらたに顧客を探す必要がありません。そのため、資本金による見栄えも、気にする必要がないのです。
このような理由から資本金については、「多ければいいとは限らない」「ただし、最低1000万円は必要」という点を意識してください。
(他業界の中小企業で1000万円はなくても大丈夫ですが、マンションの管理会社では1000万円はあるべきです)
売上高
売上高は、基本的には多い方が「実績豊富」といえます。ただ、これもやはり「多ければ良いとは限らない」ものです。
- 強引な営業で叩き出した数値かもしれない
- 粉飾決算かもしれない
- 小規模マンション向けの管理会社なら、売上はあまり関係ない
などの理由です。さすがに「あまりに売上が少なすぎる」というのは、信頼性がない管理会社です。それは避けるべきですが、その規模で平均以上の売上がある管理会社なら信頼していいといえます。
最終的には、売上高はあくまで「参考値の1つ」であり、「サービス自体が良質かどうか」という点で判断するのがいいでしょう。もちろん、新規の管理会社を探す場合は、サービスについてはまだわからないため、フロントマン個人の信頼性なども含めて判断します。
経常利益
これは、いわゆる「本当の利益」です。税金などをすべて引いた後の「純粋に手元に残る利益」を指します。
よく芸能人などが「稼いだ翌年の税金を払えない」というニュースが話題にのぼりますが、事業では「税金も重要なコスト」なのです(場合によっては一番大きなコストです)。
そのため、本当の利益は「税金まですべて払い終わった後でわかる」もの。その「本当の利益」が経常利益です。
基本的に多い方が良いが…
経常利益も、基本的には多い方が信頼できる企業といえます。ただし「なぜ多いのか」という理由が重要です。
- サービスで手を抜いている
- 不当に高い管理費を徴収している
- 修繕工事などで利ざやを得ている
このような理由で「高収益」の企業もあるためです。日本人の誰もが知っているような名門企業で、こうした不正が発覚した事件も多くあります(不動産に限らず、自動車や鉄鋼などのあらゆる業界で)。
そのため、経常利益も必ずしも多ければいいとは限りません。しかし、あまりにも少ないと「倒産のリスク」があります。そうしたリスクがないかを判断する程度に、経常利益を見ることが重要です。
経常利益率
経常利益が「本当の利益」なので、経常利益率は「本当の利益率」といえます。売上に対して、上で説明した経常利益が、どれほどの割合を占めているかという数値です。
これも多い方が「コストの少ない、ムダのない経営をしている」といえます。ただ削ってはいけないサービスなどを削っているというリスクもあるため、一概に利益率が高ければいいわけではありません。
これも経常利益と同様「参考程度」に見るようにします。
自己資本比率
自己資本とは文字どおり「自分のお金」です。借金なしで、どれだけ自分のお金でやっているかという指標だと思ってください。
会社の資本は、全体では「総資本」といいます。「自己資本・外部資本」の合計が総資本です。
- 自己資本…多いほどいい
- 外部資本…少ないほどいい
というのが基本的な見方です。たとえば、2019年12月中旬の時点で、ソフトバンクの経営危機が報じられています。これは、同社の「外部資本比率」が高かったためです(銀行から兆単位の借り入れをしていた)。
自己資本比率は、利益率と違って「高い企業ほど、変なことをしている確率も低い」ものです。いわゆる不正を働くような企業は、全体的に借り入れに頼る傾向があるためです(例外ももちろんありますが)。
そのため、自己資本比率については、高いほど信頼できると考えてください。
従業員数
これは会計の数字ではありませんが、経営に関わる数字なので、補足としてここに入れます。
従業員数は、一定以上必要です。具体的には「10人以上は必要」といえます。
理由は、10人未満の企業は一般的に「零細企業」に含まれるためです。これは下の辞書(日本大百科全書)の説明でもわかります。
零細企業は、従業者10人以上の企業と比較すると、自家労働と自己資本を中心とする個人経営で、経営と家計とが未分離な生業的色彩が強く、金融機関等からの資本調達力が弱い。
零細企業(コトバンク)
太字部分を見ると「従業員数10人未満は零細企業」と、定義されていることがわかります(あくまでこの辞書の定義ですが)。そして、そうした零細企業だと、下のような問題があることが指摘されています。
- 経営と家計の公私混同が起きやすい
- 金融機関からの資金調達をしにくい
このように、経営面で「かなり不安定」ということです。そのため、零細企業の管理会社は避けるべきであり、その一つの基準が「従業員10人以上」ということです。
受託実績…実力や得意とする物件規模を見る
受託の実績に関しては、下のような項目をチェックします。
以下、それぞれの項目の見方について解説していきます。
管理組合数
これが多いということは「多くのマンションで利用されている管理会社」ということ。つまり「人気がある・実績がある」ということで、一つの信頼の証になります。
ただ、必ずしも多ければいいとは限りません。というのは、フロントマン一人当たりの担当物件が少ないほど、良いサービスが期待できるためです。
組合数が多くても、フロントマン(管理業務主任者)1人当たりの物件が多ければ、逆にマイナスとなることもあります。そのため、この「1人あたりの数」も合わせて見る必要があるのです。
管理戸数
これも「管理組合数」に近い意味を持ちます。戸数が多いほど「実績豊富」といえます。
組合数との違いは「マンションの規模」に関わることです。
- 小規模なマンションが得意なのか
- 大規模なマンションが得意なのか
- あるいは、両方行けるのか
ということを判断する上で、管理戸数のデータが役立ちます。後ほど説明する「管理戸数/管理組合数」で、その管理会社が得意とする「規模」がつかめるためです。
受託管理組合数成長率
これは、管理組合の数が「どのくらい増えているか」です。もちろん、減っている場合もあります。
- 増えていれば、多くの組合から支持されている
- 減っていれば、組合から支持されなかった(可能性がある)
といえます。これについてはサービスの質を高めるために、あえて組合数を減らす方針にしたということも考えられます。
また、質は同じでも、戦略的に事業規模を縮小した」という可能性もあるでしょう(企業が倒産しないためには、見栄を張らずにこのような選択をすることも大事です)。
逆に、成長率が高いのは「強引に契約を獲得したから」という恐れもあります。こうした企業が「後にほころびを出すケース」は、新聞などのニュースで多くの人が見聞きしているでしょう。
このため、必ずしも「成長率が高ければいい」というわけではありません。しかし、下のようには言えます。
- 基本的には、成長率が高いほどいい
- 逆に、大幅に落ちているときは「何かある」と警戒するべき
特に重要なのは2つ目で、どちらかというと「危険を察知するための指標」として判断するのがいいでしょう。
管理組合数/管理業務主任者
一人のフロントマン(管理業務主任者)が、いくつのマンションを担当しているかという数値です。先に書いた通り、原則「少ない方が良い」ものです。
これは、ダイヤモンド・オンラインでも下のように書いています。
ランキング上位は10件以下がほとんど。大京や日本ハウズイングはやや多めだが、特に少ないのが合人社の5・9件で、できるだけきめ細かいサービスを提供するのが狙い。
東急コミュニティーが1位 マンション管理会社ランキング94(ダイヤモンド・オンライン)
「少ないほど良い」ということと、ランキング上位の会社は「1人当たり10件以下がほとんど」ということが書かれています。
管理戸数/管理業務主任者
このデータは、上の段落で説明した「管理組合数/管理業務主任者」を補足するものになります。
- 組合数が少なくても、すべて大規模マンションかもしれない
- その場合、管理「戸数」は多くなる
- だから「戸数」も合わせて見る必要がある
という理由です。実際、先ほど紹介したダイヤモンドの記事の「ランキング上位」の大手管理会社は、大規模物件が中心です。件数が少ないのには、そうした理由もあるといえます。
つまり、戸数で見れば組合数が多い会社と変わらない可能性もあるということです。同じ戸数であれば、組合数が少ない方が有利なのは間違いありませんが、何にしても「両方の数値を見る」必要があります。
管理戸数/管理組合数
これは、その管理会社が得意とする「規模」を把握するための数値です。組合数に対する戸数が多ければ、扱っている物件は大型物件が多い、ということになります。
逆に戸数が少なければ「小規模物件が中心」ということです。これはどちらが良いということではなく、自分たちのマンションの規模に、その管理会社が適しているかを見る指標です。
いくら大手であっても、大規模物件中心の管理会社は、小規模物件の管理に適しているとは限らないといえます。
資格保有者…人数と内容で社員のレベルを測る
資格保有者の人数や内容を見れば、その管理会社の社員さんの「レベル」を測ることができます。具体的には、下のような資格についてチェックしましょう。
以下、それぞれの資格について解説していきます。
管理業務主任者
これは、管理会社の社員さんに必要な「国家資格」です。
- 管理委託契約に関する重要事項の説明
- 管理事務の報告
これらを行うために必要な資格です。簡単にいうと「説明・報告」で必要な資格といえます。
たとえば、アパートなどの賃貸契約の説明は宅地建物取引士がしなければならないというルールを、知っている人が多いかと思います。それと同じで、管理業務主任者も「物件30件に1人は必要」なのです(逆にいうと、1人で30物件を担当してもいいということなのですが)。
このように、マンション管理に関して「一定の条件で絶対に必要」と国が定めている資格です。その資格なので「保有者が多いほど信頼できる管理会社」といえます。
マンション管理士
別名「マン管」とも呼ばれる国家資格です。こちらは、管理業務主任者ほど「絶対的な資格」ではありません。
国家資格ではあるものの「なくても業務ができる」のです。そのため、指標としては管理業務主任者よりは優先度が落ちます。
ただ、やはり「人数が多いほど良い」ことに変わりありません。
- マンション管理業務に精通している人材が多い
- 仕事へのモチベーションが高い人材が多い
- 社員の教育にも熱心な管理会社である
などのプラス要素の「証拠」になるためです。基本的に、管理業務主任者が多い管理会社はマンション管理士も多いので、この点は特に区別しなくても問題ないともいえます。
一級建築士
一級建築士は、簡単にいうとマンション・学校・病院・百貨店などの大型施設の設計・工事に関する資格です。こうした大型の建物の設計・工事・修繕では、一級建築士の資格が必要ということです。
実は、これは管理会社の「必須資格」ではありません。「一級建築士事務所」や、建築士が在籍している設計会社などに、設計・監督を依頼すればいいためです。
中小の管理会社は保有者がいないことも多い
どのくらいの規模で「中小」というかも難しいところですが、地場の管理会社では「一級建築士がゼロ」ということもしばしばあります。これは別に「悪いこと」ではありません。
というのは、大規模修繕など特別なイベントを除けば、一級建築士の出番はないためです。そして、大規模修繕は12年~15年に一度のペースで行うのが一般的とされます。
そのため、物件数が少ない小規模な管理会社であれば、一級建築士が在籍している必要はないのです。むしろ、そのような高いレベルの資格保有者は給与も高く、人件費でコスト高となるため、組合側としては「いない方が良い」こともあります(安くしてくれる管理会社の方がいい)。
そのため、中小規模の管理会社であれば、一級建築士の在籍数は関係ありません。しかし、タワーマンションの管理会社を選ぶなど、大手の会社を比較するときには、見るべきポイントとなります(大手は物件数も多く、自然と一級建築士の需要も在籍数も多くなるため)。
マンション維持修繕技術者
マンション維持修繕技術者は民間資格です。一般社団法人・マンション管理業協会が認定しています。
民間資格とはいえ、18年の歴史を持つ信頼度の高い資格であるため、管理会社のランキングでもしばしば比較要素として用いられます。他の国家資格よりは劣るものの、それに次ぐ参考の指標と考えるのがいいでしょう。
費用を比較する3つの基本・注意点
管理会社の比較の中でも、特に費用は重要な項目です。費用を比較する際は、特に下の3つの内容を、基礎知識として意識するといいでしょう。
以下、それぞれの内容を詳しく解説していきます。
金額自体の差は小さい(東京23区の場合)
少なくとも下の条件の場合、管理費の金額自体は、ほとんど差がありません。
- 東京23区
- マンション管理会社・上位10社
この条件で説明するのは「データが多い分、情報が正確になる」ためです。
マンション管理会社の上位10社とは
あくまで東京23区の管理棟数で、2019年のデータですが、以下の10社がベスト10となります(順番は50音順)。
- コミュニティワン
- 三井不動産レジデンシャルサービス
- 三菱地所コミュニティ
- 住友不動産建物サービス
- 大京アステージ
- 大和ライフネクスト
- 長谷工コミュニティ
- 東急コミュニティー
- 日本ハウズイング
- 野村不動産パートナーズ
後で詳しく説明しますが「管理棟数が多ければいい」わけではありません。あくまで、物件数が多ければデータのバラツキが減るため、東京23区の平均値を出しやすくなるという理由で、参考にしています。
3LDKで月最大4,900円ほどの差
先にあげた上位10社の場合、月の管理費はほぼ変わりません。平均値が最安なのは長谷工コミュニティ、最高なのはハイズイングですが、それぞれの平均値(管理費月額・㎡あたり)を並べると、下のようになります。
長谷工コミュニティ | 208円 |
---|---|
日本ハウズイング | 276円 |
差額 | 約70円 |
これは、マンションリサーチ社が集計したデータを、マンションリサーチ総研が分析したものです。㎡あたり70円の差ということは、一般的な3LDKが70㎡なので「月額4,900円」の差額となります。
つまり、おおよそ月5,000円の差額(が最大)であり、年間だと「6万円」になります。これが多いと感じるか、少ないと感じるかは人それぞれでしょう。
あくまで「最も差が開く場合」である
ここで注意すべき点は、上記は「最も差が開くケース」である点です。実際には、ほとんどの会社はこのような「両極端」にはなっていません。
そのため、A社とB社を比較しても「年間6万円」の差になることはめったにないわけです。単純に考えると「年間3万円」などの違いになるでしょう(月額2,000円程度の違い)。
これも高いか安いかは人によって意見が分かれます。しかし、重要なのは次の点です。
小さい価格差より「コスパ」が重要
ここまで書いた金額差は、ほとんど「誤差」に近いものです。一方、サービスの質については、会社によって明確な差があります。これは多くの人が日常生活で感じることでしょう(マンション管理以外でも、あらゆる業界のサービスで)。
もちろん、会社単位の違いではなく、単純に「店舗・支店単位」「担当者単位」の違いのこともあります。しかし、何にしてもこれらの要素が変われば、金額は変わらなくてもサービスの質は大幅に変わるわけです。
つまり、重視すべきは「誤差のように小さな金額差」ではなく、あくまで「サービスの質」だといえます。同じ金額でどれだけ質の高いサービスを受けられるかという「コストパフォーマンス」を重視するようにしましょう。
まとめ
ここまで書いてきたとおり、マンション管理会社の比較には多くの基準があります。しかし「普段の仕事が忙しく、これらのポイントをチェックする余裕がない」という方も多いでしょう。
そのような場合「とりあえず評判のいい管理会社を知りたい」ということが多いかと思います。そのような場合におすすめの管理会社が「武蔵コーポレーション」です。
武蔵コーポレーションは管理戸数13,000戸超、入居率97%、NHKなどのメディアでも多数紹介という優れた実績を誇っており、信頼性の高い会社です。対象エリアは関東のみとなりますが、関東エリアでマンションの管理会社を探している方は、同社を比較の候補の中に入れてみるといいでしょう。